テント一張、麻綱、小鍋、弓張提灯、油紙、毛布、毛皮付き前掛け、毛手袋、毛シャツ、毛ズボン下、同半ズボン下、真綿、襟巻き、猿股、トンビ、紙、懐中電灯、磁石、望遠鏡、検温器、カイロ、大ナイフ、安全ハサミ、楊枝、小包用ベルト、ゴム、呼子笛、アルコールランプ、アルコール、地図、瀬戸引き大鍋、同小鍋、同飯盆、同飯茶碗、同牛乳入れ、同コーヒー茶碗、アルミニウム皿、水筒、魔法瓶、葡萄酒、ウィスキー、ブランデー、甘酒缶詰、即席コーヒー、緑茶、角砂糖、甘納豆、ビスケット、ドロップ、パイナップル缶詰、牛肉缶詰、鯛の力煮、福神漬け、海苔、麸、椎茸、米、味噌、鰹節、味の素、特に牛肉の佃煮作り携える。
服装は半防水セル詰襟服、半ズボン、レインコート、つばの狭い防水帽子、特に先饗導者の注意により、巻脚絆は用いずに日本脚絆を着けること。
服装は半防水セル詰襟服、半ズボン、レインコート、つばの狭い防水帽子、特に先饗導者の注意により、巻脚絆は用いずに日本脚絆を着けること。
同行者は、名古屋電燈会社支配人角田正喬君、同社員天野富之助君、佐々木綱雄君である。天野佐々木の両君は、天下の峻嶺雄峰を大股で跳んで回る山岳会員の健脚家、日本アルプスの嘆美者にして、幾度も踏破の経験があり、今次東道の労を取る事となった。とにかく一週間程は、隣りも世間もない山岳巡礼山の歴程を担うのである。携帯物資は、不充分ながら間に合うにしても、ここで困るのは不時の病気だ。是非ともお医者さん一人同伴の必要があるが、自動車で御来診を願うわけでなく、共に金剛杖を突張って、険難踏破の御難儀をかけるのだから、よほど登山趣味を解する人物でなけれは相談にならない。幸いに、北里博士の養生園を管理する友人田端重成君の斡旋で、同医局後藤文吉君の同行承諾を得た。志立鉄次郎君もこの行に参加する約束で、後藤君と同伴、新宿駅から出発して、信州松本駅で会同する手はずである。
往路は島々道、目的の中心は槍ヶ岳。常念山脈を縦走して、中房へ下る予定で、私達一行は、七月二十ニ日、午前九時名古屋駅発中央線列車の客となった。